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連載・特集 指圧へのこだわり(6):

考察:頸部の指圧の重要性〜位置と効果〜

  • 2025.09.03
  • 2025.09.03

小野田茂(25期:日西指圧学院学院長・塾指圧プラクター塾長)

この考察は、日本指圧専門学校を卒業され後にカイロプラクティック、特にオステオパシーの世界に入り、今現在もオステオパシーの研究・指導・治療を現役で実践している平塚晃一先生に、指圧の世界の特に浪越徳治郎先生が提唱する前頚部の指圧の重要性について、ご意見を簡単に文章にしていただいたものです。

平塚晃一先生に改めて感謝いたします。


頚部上部前側1点目の位置と効果(浪越指圧前頚部1点目)

解剖生理学

頚部前側1点目の皮膚の下には広頚筋があり、顎下には舌骨を挟んで上には舌骨上筋と下には舌骨下筋の舌骨筋群がある。

深く押せば第3~第6頚椎横突起の前結節から後頭骨基底部下面に向かう頭長筋に触れることが出来る。

作用

舌骨筋は下顎の咀嚼運動の開口を担当する。頭長筋の作用は両側の緊張で頭部を前屈させ、片側の緊張では同側に頭を前屈させる作用があり、作用がある。

神経支配

頚神経叢(C1~C4)
頚椎1番の横突起の前内側面には前頭直筋、上外側面には外側頭直筋がある。
後頭環椎間の後方からは前頭直筋、外側頭直筋へ行く神経も通る。
総頚動脈にも容易に触れることが出来、内頚動脈、外頚動脈の分岐点の頚動脈小体にも触れることが出来る。

尚、頚動脈、経静脈と共に頚動脈鞘に包まれた迷走神経の存在も内臓の副交感刺激にもなる。

症状

これらの筋の持続的緊張により後頭骨基底部の動きの一部を制限したり、前頭直筋、外側頭直筋は後頭環椎間の靭帯と共に後頭環椎間の緊張をもたらし椎骨動脈の流れを悪くして他の要素も加わることによって立ち眩みや眩暈、酷い時は吐き気、車酔いなども起こし易くなる。

時によっては環椎もしくは大後頭孔のズレにより延髄に軽い圧迫が起こり吐き気や、非常に理解しがたいことではあるが内臓障害や痔が悪くなることもある。
その他腰痛や手足の痺れなども起こすことがある。

参考

こういったことは西洋医学であるメディカルでは理解し難い症状として現れることもしばしばである。しかしながら手技業界であるカイロプラクティックやオステオパシーの考え方から言えば当然のことである。指圧の手技の効果も法律的には西洋医学としては認め難いことだと思うが事実の効果が証明するところである。指圧を行う人達もこう言った解剖学や生理学、症候学を念頭において施術すればより効果的で的確な施術を行うことが出来てクライアント様にも信頼と感謝を得ることが出来る。

禁忌

但し、禁忌としては進んだ動脈硬化や頸動脈にプラークが存在したり、脳動脈瘤の存在や最高血圧が200㎜Hg以上、最低血圧が130㎜Hg以上あるような場合や酷い眩暈などは施術を控えてメディカルを紹介した方が良い。

引用元:『Aze Shiatsu』 小野田茂

この絵図の前頚部一点目又は2点目から4点目まで胸鎖乳突筋上になっていますが、胸鎖乳突筋上は間違っていて気管のすぐ横の頚椎椎体の前面及び頚椎横突起前面上が正しい位置になると思います。

この実技の写真から見ても前頚部は明らかに胸鎖乳突筋上ではありません。従ってこの4点は胸鎖乳突筋とすべきで前頚部4点ではないと思いますが如何でしょうか。
前頚部は椎骨の数から云えば4点~6点位が宜しいかと思います。

引用元:『日本人体解剖学 第1巻』(1982年第18版発行)

頚部前側2点目以降から下位頚部前側までの位置と効果

解剖生理学

2点目以降も頚部前側の皮膚の下には広頚筋があり深く押せば頭長筋及び頚長筋に触れることが出来る。

頭長筋は第3~第6頚椎横突起の前結節から後頭骨基底部下面に向かう。頚長筋は上斜部、下斜部、垂直部の3部からなる。上斜部の起始は第3頚椎から第5頚椎の横突起から起こり環椎の前結節に着き、下斜部は第1胸椎から第3胸椎の椎体から起こり第6から第7頚椎の横突起に着く。垂直部は上位3胸椎と下位3頚椎体部から起こり第2頚椎第4頚椎体に着く。

作用

両側が収縮すると頭を前屈し、片側が収縮すると同側に傾く。

神経支配

頚神経叢および胸神経叢から出る(C3~C8)

禁忌

頸部の禁忌は全体的に共通で、進んだ動脈硬化や頸動脈にプラークが存在したり、脳動脈瘤の存在や最高血圧が200㎜Hg以上、最低血圧が130㎜Hg以上あるような場合や酷い眩暈などは施術を控えてメディカルを紹介した方が良い。

横頚部

解剖生理学

基本的には頚椎1番から7番まで頚椎の横突起の部分になるが頚椎の横突起は前結節と後結節に分かれていて横軸には外方に向かって神経孔を作りそれぞれの頚神経やリンパ管を通過させる。

只、第1頚神経は後頭骨と環椎の間を通るためC7とT1の間を通る頚神経は第8頚神経となる。尚、縦軸には横突孔を作り椎骨動脈を通す。横突起には前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋が付着して首の側屈、前屈、後屈、回旋などに関与する。

神経支配

小後頭神経はC2~C3から側頭部へ、大後頭神経はC2の後枝から後頭、頭頂部に向けて神経支配する。頚神経C5~C8、及びTh1は腕神経叢を作り前腕へ行く橈骨神経、正中神経、尺骨神経として上肢を支配する。横隔膜の律動を支配する横隔神経は頚椎3番もしくは4番から出る。上部頚神経C1,C2は舌下神経、迷走神経とも交通枝を持っている。

その他一部は大耳介神経、頚横神経、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋、等に交通する。 後外側鎖骨上神経、中間鎖骨上神経、内側鎖骨上神経はC4の支配である。僧帽筋や胸鎖乳突筋は頚部脊髄根から出て反回し頚静脈孔から出てくる副神経の支配である。

症状横頚部2点目以下は頚神経1~3の小後頭神経、大後頭神経は側頭部及び後頭部の皮膚表面の知覚神経を司るので皮膚表面の頭痛は頸神経によって上部頚神経によって引き起こされる。従って頭の側頭部、後頭部の皮膚表面の頭痛は上部頚神経を念頭に置いて横頚部の施術で解決できます。

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